枚方市

噴泉の水は枯れ、浴池には枚方市 水漏れは錆び、眼に入るものすべては古色蒼然としてそこにはただ樹が繁り、花が乱れ咲いているだけの現実にはせよ、あまりにも絢乱たる邸の様子にただ夢に夢見る気持がして、眼を瞠ってたたずまずにはいられなかったのであった。しかも何百年前に人が住んでいたのか、何千年前に人がいたのかは知らなかったが、家の中は永遠の寂寞そのもののごとくに、たたずんでいると何かは知らず、冷え冷えと一種の鬼気を感ぜずにはいられなかったのであった。しかも眼を挙げて一歩窓外を眺むれば、そこには真昼の陽光が燦々と降りいで彼方の昼なお暗き蒼たる糸杉の森を背景に、一面の繚乱眼も眩まんばかり絢な花園であった。そしてそこにも花に台石を援われた幾つかの青銅製の古代武人らしきものの像がそそり立ち、雪花石膏の花を欺かんばかりの裸体女神がたたずんでいるのであった。住む人とてもない無人の家、……絢乱たる廃墟!華麗なる庭!夢に夢見る心地というのはまったくこれを指すのであろう。さながらぎりしゃか古ろーま貴族の邸にでもたたずんで在りし昔の豪華なる俤でも偲んでいるかのような気持がしてくるのであった。そして、こうした無人の家は、弊社のはいったこの家ばかりではなかったとみえて、やがて茫然とたたずんでいる弊社の傍へ、他の家を見終った軍医長たちがどやどやとはいってきた。