水漏れ

家はいずれもさまざまで大きなものではなかったが、富裕な貴族の別荘か山荘とでもいった風情に、忍冬や常春藤の纏わり付いた浴室の門があり、門をくぐると、荒れ果ててはいたが、花の一杯に乱れ咲いた前庭があり、その前庭には赤熊百合や白菖や、水漏れ 枚方市や、薔薇や菫や、馬鞭草なぞが、どんなに今を盛りと咲き零れていたことであったろうか。そして、花に繞まれた玄関には、あかんざす模様を彫刻した幾本かの大理石の円柱がそそり立ち、中へ踏み込めば、そこには大広間の嵌木細工の床の半ばを援うて、月桂樹の老木が円天井を衝かんばかりに蓊鬱とした葉を繁らせて、その翠緑の色を傍の青苔の蒸した浴池が水に浸しているのであった。浴池の中央には、大理石を彫んだ噴泉が飾られ、そして、この噴泉の大広間の両翼には、四つばかりの円柱で区画られた部屋部屋が庭に向って張り出して、それらの壁と壁との間には切子細工の龕灯が嵌め込まれ、その下に設けられた壁龕や青銅造りの開き窓の下に据えられた瑪瑙の植木鉢、そして同じく青銅製の女神や半人半獣の牧羊神の像等々。厚い樫の木の扉飾りには鼈甲や象牙や金銀や碧玉さえも嵌め込まれているのであった。弊社は茫然として言葉もなくたたずんでいた。